Auckland ダイアリー

皆様ご無沙汰しております。引っ越しの際は大変お世話になりました。本当にありがとうございました!遠くなりますが、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

マオリ族を巡って

ニュージーランドの先住民といえばマオリ族です。(息子は何度訂正しても響きが似ているモアイ族、と言ってしまいます。)

 

マオリ族ニュージーランドに移民してきたのは色々な説があるようです。漠然と「千年前」と言う人もいれば、「13世紀」という説も。

先日、caucasian(コーケージャン、と発音。何だか焼肉のタレみたいな名前ですが、いわゆる白人のこと)のニュージーランド人と話をしていて、

「13世紀に移民してきた、と言うのは比較的新しい歴史ですよね」

と私が言うと、その人は

「13世紀、と言うのも根拠がないんです。一説には16世紀以降ではないか、と言われています。私はイギリスからの移民5世で、私の祖先が移民してきたのは19世紀半ばです。」

と教えてくれました。彼は、数百年早く移民していたマオリ族が先住民としての特権を持っていることに疑問を持っているようでした。俺たちみんなニュージーランド人じゃないの?という気持ちなのではないかと。

マオリ族とヨーロッパからの入植者の間の歴史はまだ勉強不足ですが、今マオリ族に多く見られる貧困やドラッグ問題などは、マオリ族に対する搾取の歴史が由来している、という考えから、マオリ族優先の政策が多くあります。

大学もマオリ族の血統だと(100%マオリ族、という人はいないので皆混血です)入試が有利だったり、特別な奨学金があったりします。大学の先生たちの研究も、マオリに関する研究が推奨され、研究費も多く用意されています。

例えば、ニュージーランドの大学では医学部にThe Maori and Pacific Admission Scheme(MAPAS)というマオリ族と太平洋の島々の家系の学生を援助するシステムがあります。これは、このような民族的背景を持つ人々の疾病率が高いため、よりコミュニティーに入っていける同じ民族の医者を増やそう、というプログラムです。これは、入学や進級に特別枠を設けるだけでなく、彼らだけ使える勉強室があったり、勉強面での特別なサポートが受けられたりします。これは不公平ではないか、という声は当然ありますが、外からはなかなか分からないコミュニティーの事情もあるようです。例えば、医学部は勉強が大変なのに、頻繁にある親族の行事に参加しないと親に怒られたりするそうです。大学の勉強がどんなに大変か、家族やコミュニティーの年長者たちに分かってもらえないと、家族のプレッシャーに負けて大学に来れなくなってしまう学生も多いそうです。また、医学部は勉強の年数も長いので、「早く働いてお金を稼ぎなさい」と言う親も多いそうです。そのような場合に、大学の担当者が家族に説明をしたり、学生本人を励ましたりして勉強を続けられるようサポートするのです。

こう言った政策に対して、マオリ族が優遇されすぎていると感じている人は多いように見受けられます。しかし、それを「ずるい」と公の場で言うのはタブーになっているため、余計に鬱積する不満が白人ニュージーランド人の間にあります。

もちろん政府の援助が必要だと考える人たちも多くいます。例えば、マオリ族の集住地区の小学校などでは朝ごはんが食べれない子が多かったりドラッグ問題が深刻だったりするので、そういった家庭環境やコミュニティーの環境への応急処置として政府の援助は必要なようです。

私が思うのは、政府が優遇政策でサポートするのではなく、政府は差別がないことだけを保証し、マオリ族アイランダーズのコミュニティー自身の内側から改善していく動きを生み出さないといけない、ということです。政府が援助するのは、こういったコミュニティーが自分たちでは何もできない、とある意味馬鹿にしているといえるかもしれません。

マオリアイランダーズ以外のニュージーランド 人の間で広がっている「あいつらずるい」と言う感情は、確実に新たな差別を生み出しています。